母校である白峰学園保育センターにて、主任向けコーチング研修を担当させていただきました。
当園の主任の葛藤を見守る中でも、各地を研修で回る中でも、「主任」という立場に置いて感じる板挟みの葛藤は同じなのではないでしょうか。
私たちは、保育の考え方や子どもへのまなざしを学ぶ機会はあっても「主任として 保育士たちを導いていくための在り方」を、具体的に学ぶ機会が少ないのが現実。私自身、コーチングを学んでいたことに助けられました。
こちらの講座では、
主任の置かれている現状を踏まえて、
参加者がそれぞれ感じている葛藤を実践のコーチングで解消していきながら、
現場にコーチングのスキルを持ち帰ることができるようプログラムしました。
以下、レジュメからご紹介します。
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1.保育現場 リーダーの課題
●「見て盗め!」は通用しない
‐時代の変化とともに、コミュニケーション量・質も変化
‐体験の質・量がアンテナにつながる
‐指示待ち型、気づけない
‐自分でやった方が早いため、いつまでも育たない
⇒どう、育てていくか?かかわり方を変える必要がある。
●基本的生活習慣の指導「どこまで指導すればいいの?」
‐常識の認識のちがい
‐仕事・プライベートの区別など
‐本人の人生の課題?
⇒仕事の側面から指導アプローチすることで、成長も
●保育士のマネンジメント・モチベーションUP
‐「子どもは好き」な一方で、書類の多さ・求められることが多くある。
‐大事なのは、働いている人たちが疲弊せず 元気な状態でいること。
⇒職場内の人の関係調整・モチベーションをどう上げて行くか。
●途中退職の防止
‐「子どもは好き」、人間関係や疲弊で仕事を離れていく人も多い現実。
⇒いかに気持ちに気づき、葛藤に寄り添うことが出来るかが
明日の行方を左右する。
●保護者とのかかわり
‐保護者の役割が理解できていない
‐不器用、コミュニケーションに不慣れ
‐「忙しい」「見てほしい」保護者
<園内の足並みを整えるためには・・・?>
・連携・意思疎通・情報共有の課題 ⇒共に進む姿勢
・伝えたはずが、伝わらない?! ⇒寄り添い・確認
・意見を出し合える、主体的な職員集団 ⇒自発性を引き出す
<職場で上手くいっていること・課題と感じていること>
2.コーチングとは
対話によって自発性を引き出す、人材育成に有効な手法。
馬車が人を目的地まで運ぶことに由来し、
コーチングを受ける人(クライアント)を
目的達成へと導くことを指す。
大前提は、「相手の中に、答えがある」
傾聴・承認・問い掛けなどを通じて、内側にある可能性を呼び起こす。
~ふだん何気なく行っていることを意識的に行うことで、効果が高くなる。
現場に生かす視点として―――「職員は、園は、答えを持っている。」
・・・という視点から、可能性を呼び起こす。
●デモコーチング
☆パターン1
☆パターン2
~2つのちがいはなんでしょう?
<メモ>
●コーチングの道のり
1.概要・仕組みを知る
2.体験する
3.実践力を高める
~今回は2まで。
3は現場で実践力を磨きましょう!
1.ペーシング
【ペーシングとは】無意識の部分を相手に合わせることで、相手が心を開く
(信頼関係のベースを整えること)
・笑顔(あなたの存在を受け入れていますよ、のサイン)
・呼吸・言葉・場・仕草・声の大きさ/高さ・視線・ペース)
・あいづち・うなずき(「あなたの話を聞いています」「理解しています」)
*ペーシングを意識し、二人一組で“今日目指す状態”を話してみましょう
2.承認
【承認とは】存在を認めること
承認は、心の栄養になる。心が温かくなるような承認の言葉かけを!
→自信が付き、モチベーションが高まる
2つの承認:「無条件の承認」と「条件付けの承認」
「無条件の承認」
在り方・過程・上手くいっているところ・成長に焦点を当てる
・「おはよう」「おつかれさま」といった挨拶や、笑顔。
・「あなたはここにいる価値がある存在ですよ」というサイン
・本人の人となりで良いところ~「愛されキャラだよね」など
・保育でがんばっているところ・認めているところ
~「手遊び、上手だよね」「記録の書き方、上手になったね」
・努力している姿・過程への励まし
「なかなかうまくいかないかもしれないけど、
がんばっているのは分かっているからね。もう一息、頑張ろうね」
「条件付けの承認」
何かができた時・上手くいった時に掛ける承認の言葉
・任されている仕事がうまくいったときに「良かったね!」
・ピアノがうまく弾けたとき「うまく弾けたね!」
・評判が良かった時「楽しかったって声が聞かれたよ!」
成果が出た時には成果を承認し、喜びを分かち合いましょう!
育成者の期待値に届かないと、ぎくしゃくしてしまうことも…。
結果につながらなくても、努力をしている姿勢を認めていることを
まずは声に出して伝えましょう。
*同じグループメンバーに対する承認のメッセージを書いてみましょう
*あなたの同僚 さん への承認を書き出してみましょう!
3.質問
【質問とは】学びを自分の力に変える“問い掛け”
人は問い掛けられると、思考が回り始める。
⇒受け身だった人にも、スイッチが入る!
「どう伝わりましたか?」
(⇒伝えた内容を相手がどう受け取ったか、どこまで伝わったかの確認)
「どう感じた?」
(⇒相手に起こっていることを知ることで、
次にどうかかわればいいかが見えてくる)
「○○について、どう教わりましたか? 」
(⇒本人の中の認識を知る機会になる)
「何が原因ですか?」
(⇒原因を自分で探りに行く時間を持つ)
「この体験から、何を学んびましたか?」
(⇒体験からの学びを引き出し、教訓・知恵にする)
「今後、具体的にどうしていきますか?」
(⇒注意すべきこと・心掛けることなどを引出し、今後につなげる)
~など
【 問い掛けの注意 】
誘導尋問にならないように!~心的なプレッシャーで逆効果になる
問い掛けは、あくまでフラットに。
「相手と一緒に考える」ようなスタンスが良いでしょう。
【問い掛け~C・A・Nのススメ】
C=チョット
A=アホに
N=なってみよう♪
●かかわる側は答えを持たず、ゆるいスタンスで相手に寄り添う
⇒問いが相手に沁みて、やわらかい土台から答えが出やすくなる
【行動から得た学びが、成長につながる】
出てきた答えはすでに伝えていたこと・教えていたこと?!
体験を振り返り、答えを見つける2つの意味
1.新たなアンテナが立ち、学びを吸収する姿勢ができる
~素通りしてしまった情報を、あらためて受け入れる準備ができる。
2.本人のキャパシティー(容量)に余裕を作る!
問い掛けにより、脳内が整理されていく。
自分で答えを出すことによって情報がつながり、“知恵”になる。
4.観察・フィードバック
<観 察>
相手は、自分の状態になかなか気が付かない。
客観的に様子・気持ちの変化・表情の変化を観察すること。
<フィードバック>
観察によって感じたことを伝えること。
発しているサインを受け止め、伝えることで、
相手に気づきや変化が起こる。
5.可能性を信じる
今見えている姿と、内に秘めた可能性。
あなたの部下にはどんな可能性が眠っているでしょうか?
可能性を信じてくれる人の存在が勇気づけにつながり、
次の行動へのモチベーションとなります。
*あなたの同僚 さん の
秘めている可能性を書き出してみましょう!
【ワーク : コーチングセッション】
●コー チ役:質問を中心としたかかわりで、気づきと学びを深める
●ク ラ イ ア ン ト役:ここまでの気付きについて話をする
●オ ブ ザ ー バー 役:観察・フィードバックをする
3.会議で意見が出やすい工夫
リーダーシップとコーチングのちがい?!
●リーダーシップ:旗を立てること
●コーチング:透明人間のイメージ
前提:「現場は答えを持っている」ことを信じる。
課題と感じていること・背景・出してほしい意見の内容などを話した上で、
場に質問を投げ、人の表情を観察し、変化をフィードバックし、
出てきた意見を承認する。~全体の意見をまとめていく。
<まずは、題材!>
2.理想の状態
3.懸け橋となること
1.現状
<ポイントと感じたこと>
<話してみた感想>
4.職場の人間関係をスムーズにするアプローチ
・職場と風土
・システム思考で糸口を見つける ~システム思考とは~
<現在の状態>
<理想の状態>
<理想の状態に向けて、できることは?>
・
・
・
5.まとめ・ふりかえり
・相手の受け取りやすい伝え方のコツ
一方的に伝えるのではなく、相手にとって良いこと・行動の意味を言語化することで
視野が広がり、アクションへのハードルが下がる。
●黄金ルール:相手にとって意味があること + 伝えたいこと + 寄り添い
・チーム内での、日ごろの承認・信頼関係
保育はチームで行うもの。個々の力が合わさって、信頼される園となる。
保育士間・保護者も、子どもの育ちをサポートするチーム。
安全な場・安全な関係・信頼の土台を心掛ける
・フォロー・サポート
主任だって、人間。人は、完ぺきではないがゆえに素晴らしい。
一人で抱え込まず、お互いに相談・声掛けをする習慣を。
・情報共有
情報は水もの。流れを止めず、関係者間で意識的に共有を。
・成長を喜び合える関係性
相手に関心を持ち、小さな成長・取り組みの姿勢・変化に気づく習慣を
一緒に喜び合う関係性が、双方のモチベーションにつながる
<明日からの小さな一歩は何ですか?>
ご活躍、心より応援しております!
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<感想を一部ご紹介します>
・リーダーの課題は共通することがあり「そうそう!」「あるある!」と気持ちがすっきりしました。
・コーチングの理論は時間に余裕があればじっくり職員と話し合えるが、保護者に関することや時間がなくすぐに判断しなくてはいけないことも多々あり、「ダメでしょ!」と言ってしまうことも多いので反省する機会となりました。今後の課題になりました。
・今回の研修では、主任としてほかの職員にどうかかわっていくかとても参考になりました。
-現場の職員を信じること
-良いところを見つけていくこと
-話を聞くときの姿勢、そしてどう導いていくのか など。
・実際にセッションを行った時は難しさを感じましたが、ほかの園のことを知れたり話を真剣に訊いてくださったことが地震へとつながったように感じました。
すぐにできることを実行して、より良い環境雄作っていけたらと思います。
・コーチングの研修を受けた先生からの報告を聞いたことはあったのですが、難しそうというイメージでした。
実際にやってみるとはやり難しかったのですが、日々の保育の中で無意識に行っていることも多々ありました。
後輩指導という点でも「こうしたらいいよ」といえるタイプではなく、いろいろ相手の気持ちを聴きながら受け入れながらやっていました。
このやり方で間違いではなかったのかな、と少し自信を持てました。
・人間関係に悩みつつ、自信が持てない中での参加でした。
自信がクライアントとして誰かに話を聞いてもらいたいような気持もありつつ、
聞く側の態度はとても参考になりました。
・先生のお話がとても面白く、魅力的でした。
実際に体験することで講義の内容が身に沁みこんだ感じがします。
また、他園の主任の先生方と貴重な意見交換ができ、とても楽しく学ばせていただきました。
・グループ討議が多く、参加型の研修だったので頭をフル回転して参加できました。
聞き上手になって若手の保育士も意見を出しやすい職場にしていけたらと思います。
・すべてが具体的で、
園に戻ってからすぐに使えるスキルとなるような内容で有難かったです。
信頼関係がどのことにも求められることであるのは十分わかっていても、
人を信じる力が落ちてきていると感じる昨今。
保育をするうえで、人を育てるときの思いを大切に
時間をかけることはしっかり時間をかけて
取り組みたいと思いました。
・ありがとうございました。
明日からまたガンバロー!と思えました。
・とても分かりやすく、心に響きました。
「あっこれで良かったじゃん」というような場面、
やっぱそーだよね…という部分もあり、
上の立場になるにつれて
責任を持った言葉や下の子たちにも信頼されるようなワザを聴けました。
・主任になってから、”相手にどう伝えよう”ということばかり考えていたように思います。
今日の講演を聞いて参加して、相手の気持ちに寄り添う、
相手の気持ちを受け入れることが大切なんだということを感じました。
自分が相談する側の訳になってみて気づかされることがたくさんあったように感じます。
”自分でやらなければ”と気負わず、みんなで一緒に考えるという大切さも学べたので、
園に帰ってからできるところから実際にやってみたいと思います。
・ロールプレイが多く、実践から感じて学ぶことができた。
今日から保育だけでなく、私生活でも生かせるものだと思った。
初めてコーチングという名前・内容を知り、
今まで自分が漠然と抱えていた課題を知ることができた。
・主任の立場として悩んでいたので、いろんな方とセッションで来て、
自分一人だけではない、同じ悩みを持っている方々がほとんどであったのだと共感してくれたことで
気がラクになった。
・後輩へのかかわりについても、まず一人一人の個性的な部分・良い部分を引出すこと、
頭で思うだけでなく 書き出すことで考えさせられた。
・コーチングとはなんだろう?と思いましたが、
参加させていただき、相手の中にある答えを導いていくことであることが分かりました。
考えていることを相手に伝え、答えを出してしまうことが多くありましたが
これからは相手が答えを出せるように話しやすい雰囲気を作れたらと思います。
・席替えがあり、さまざまな先生方のお話をお聞きすることができたことが
嬉しく思いました。
・コーチングという言葉がはやりのようになってしまっているので、
実際にどういうものか学ぶ機会になりました。
現場では今日のワークのようにはいかないことも多いと思いますが、
「気づき」を共有し、コミュニケーションを大切にして
チームワークを作っていきたいと思います。
・この研修を受けて、
初めてコーチングということの意味や大切さを知ることができました。
実際に知らない方とセッションをする中で気が付いたこと・共通の悩みがあること・
どういったことがいいのか、方法など・・・知ることができました。
ふだん、自分は相手に対して、どう接しているのか?
話を聞いているのかも気が付くことができました。
一方で、自分の意見を言いすぎて相手の気持ちを考えていないところや
文句ばかりで何も解決していないことにも気が付きました。
この研修ではとても学ぶことが多く、ためになる研修でした。