こんにちは、スタッフの山本です。
本日も松原の記事をご紹介します。
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(2013年6月25日記事)
こんにちは、
以前 保育士さんのコミュニケーション講座Shaberi-BAのランチ会にて
「子どもになんて声を掛けたら、お話しを聞いてくれるんですか?
どうやって説明したらいいのか、悩みます。」
~という声をもらったことをヒントに作った、今回の講座。
保育を始めて間もない方からベテランさん、
埼玉・東京・小笠原からもご参加いただき、
レジュメを中心に、職人の“ワザ”をシェアいただきながら
あっという間の2時間となりました。
「保育士は、子どものいる空間を創造する人。
その人の存在感・影響力が子どもと相乗効果となって
クラスの雰囲気や流れが生まれてくるということを、
あらためて感じています。」
~ということで。
保育士さんがいつも、何気なくやっていること。
けれども、新人さんには「神業!!」としか思えないマジックの数々を、
様々な角度から紐解いていく時間となりました。
以下、当日の様子を進行に沿って ご紹介します。
1.保育をしている自分の、理想の状態を明確にイメージする
・子どもにかかわっている“理想の自分”の状態
・理想の自分が接している、
その時の子どもたちの表情・様子
~について、みなさんに聞かせていただきました。
人は、意識に上っているのが2%、
そのほかは無意識の領域に眠っているといわれていますが、
最初に「ありたい状態」をイメージすることで、
その間にある現状が見えてくる。
保育と一言でいっても、価値観はそれぞれですが
お一人お一人の子どもへの思いが会場を包んで
あたたかい空間が広がっていきました。
2.子どもの関心の“つかみ”としての、手遊び
子どもは楽しいことが大好き!
……だからこそ、楽しい遊びを中断されることほど
嫌なことはないわけで。
保育というのは、子どもたちの「○○したい!」という気持ちに
上手に寄り添いながらも
日常生活の流れの中に、さりげなく誘導していく必要があります。
今回は、私の大好きな「山小屋いっけん」をみなさんと一緒に
・恥ずかしさを横に置いて(恥ずかしがると、イタイですからね~。)
登場人物の表情になりきる!
・子どもを巻き込む
・情景や物語を体現する
~ということを頭に置きつつ実演し、
手遊びを保育の要所で活用することの効果を再確認しました。
3.子どもが動きやすい声掛け
お散歩に行く時・おもちゃを出す時・制作活動をする時など……
子どもたち(集団)と一緒の生活の中では、
「なんとなく、言わなくても分かってるでしょ?」
~ということは成り立ちません。
「こうしたい」という目的があるなら、あらかじめ前振りをし、
全体像と意味・方法と具体的な内容・
そして禁止事項の確認などを共有しておく必要があります。
なぜなら、子どもたちには時間の感覚がまだ十分に育っておらず、
前後関係が分からないと 不安になるからです。
不安になると……目につくものの方に行ってしまったり。
「やりたい」と感じること、
魅力を感じるものの方に引っ張られていってしまいます。
そこで……保育士が考えていることを言語化し、
時系列で認識を持たせ、その都度
何をする時間なのかを感じられるような、誘導が必要なのです。
これはベテランの保育士さんはみんな、何気なくやっていること。
(持って行き方は違えど)
たとえば……。
1.○○をします(大きな目的)
2.これは、こういうこと(もの)です。
(用途を分かりやすい言葉で伝える)
3.やり方はこうです
(道具を使うのか、方法などを説明する)
4.そうすると、こうなります。
(目指す最終形を見せてモチベーションを上げる)
5.やってはいけないこと(お約束)は、これです。
(危険の予防)
6.まずは、○○からやります。
7.どうぞ!(行動を促し、サポートに入る)
~というように。
全体が分かり、安心感が持てるような声掛けが大切です。
つい気が焦り、目の前のことに気を取られがちですが……。
(次は何をする、目の前の子は何をしている、など)
そういう中でこそ逆の発想で、全体を捉える。
全体の枠組みを把握したうえで、
目の前の仕切りへと誘導してあげるのです。
私もこれが分かるまで、ずいぶん苦労しました。
4.全体を見ながら、個を見る意識
~さて、3でもお伝えしましたが、
目の前の出来事に気を取られると……全体の動きが、おろそかになります。
少ないクラスでも8人ほどはいるはずで、
そのメンバー全員に「今何をする時間か」「どうすればいいか」を伝えつつ、
一人一人の気持ちのフォローをもする必要がある。
外れている子は、何を感じているのか?
この子は、どういうタイミングで声を掛けるのが一番ベストなのか?
クラス全体の動きを肌で感じながら、
働きかけのタイミングを頭の片隅で見計るのです。
これは、システムシンキングを勉強して気が付いたのですが、
子ども一人一人の行動傾向・個性・子ども同士の関係性・
家庭背景などを頭の中に入れておき、
8人なら8人のドラマが同時進行しているのを肌で感じながら、
全体に向けて保育の働きかけをしていく
……という、高度な“プロのワザ”。
保育の現場ではよく
「よく見て。そして、盗んで!」
と言われますが、
「どうして、8人が同時にしていることが分かるの?」
~と、新人さんは不思議に思うことでしょう。
ズバリ、言います。
「感じて」いるのです。
●視覚……8人が同時にどんな動きをしているのかを、
目の前の一人を見ながらも、把握しています。
●聴覚……目の前の子と会話をしながらも、その場にいる全員の声・雰囲気を聞いています。
「んっ、なんかアヤシイ!」と思うと、噛みつきの一歩手前だったり。
ケンカが勃発する、まさにその瞬間だったり。
赤ちゃんが転倒して、けがをしそうになっている瞬間だったりします。
●触覚……子どもたちとスキンシップをしながらも、
さりげなく触れて異変がないかを感じています。
私も一時期(児童養護時代)、手で触った温度を
ピタリと体温計で当てられる時期がありました。
●臭覚……「ん……?なんか、香ばしい香りがする。
誰か、“持って”ない?」
これは、○○○が主ですね(笑)。
いつもの子どもたちの匂いと、なんかちがうな~。
あるいは、○○○であっても、
「ちょっと匂いがちがうよね。お腹、ゆるくなってるのかな?」
~と、関わりながら 体の状態にもアンテナを立てます。
私たちは、ふだんの生活の中で感覚が鋭敏すぎると疲れてしまいます。
なので、“今この場面において必要な感覚の程度”にボリュームを合わせて、
カクテルパーティ効果(聞きたい情報に焦点を当てて聞く)で生活をしています。
けれども、保育はそうはいかない。
一人一人の安全が掛かっているので、
笑顔で遊んでいるように見えながらも、感覚は全開で
常にアンテナを張り巡らせ、子どもたちと向き合っているのです。
「もっとも充実した状態は、力を抜いたようにリラックスしている状態」
……と、少林寺でもいいますが、保育士の笑顔はまさにその状態ですね。
現場に慣れるまでは、毎日くたくたに疲れて意識を失ってしまうのも
それを思うと、納得がいきます。
こういったことを踏まえて、
一人担任(年齢にもよる)の場合は、
全体の動きを見つつ、全体が“乗った”後で、個のフォローをする。
複数担任やフォローの先生がいる場合は、
お互いに声を掛けあい、役割分担をして チームで対応。
全体と個のバランスを取りながら、
子どもたちの行動をあるべき方向へと導くという
神業のようなことを、保育士さんはしています。
5.時には叱ることで善悪の判断を育む
たまに、「叱っちゃいけない。」「ほめて育てなきゃ!」
~と思っていらっしゃる親御さんがいますが……。
そんなことは、ありません。
私たちは、動物。
褒めるばかりでは、人間社会で生きていくためのルールは身に付きません。
しつけとは、社会の文化を子どもに伝えていくこと。
これから先、20年後の社会を生きる子どもたちにこそ
そのルールは必要ですよね。
そこで一つ、会場に質問を。
「叱る」と「怒る」のちがいはなんでしょう?
会場の3年目の保育士さんより、
「叱るは、子どもためを思って伝えること。
怒るは……感情で一方的に言うこと」
という答えが返ってきました。
そう。
「怒る」のは、感情=自分ごと。
「叱る」のは、子どものためなんですね。
そういったことを踏まえて、ときには
「いけない」ということを、面と向かって伝えていくこと。
これは、動物の本能として
「この人は、話を聞く価値があるかどうか?」
~とうかがっている子どもにとっても、
大切な見極めの場面になります。
その証拠に、本当に子どものためを思って叱ってくれる先生に
子どもたちはなつきます。
具体的な叱り方としては、
・なぜ、いけないのか?
・これをすると、どうなるのか?
~ということを伝え、本人に届いたら
「どうすればいいのか」を自分の口から言ってもらうのがいいですね。
(これは、年齢によりますが。)
また、クラス全体に善悪の判断を伝えていくことで
クラス全体の共通認識が生まれ、「お約束」として共有することで
集団生活の枠組みにもつながります。
ここで、みなさんに
「叱る」に関するエクササイズを。
お題は……「廊下を走らないように注意をする」場面。
さまざまな答えが出てきて、
お互いに引き出しの幅が広がる時間となりました。
6.信頼関係を育むふだんのかかわり
~ここまで、様々なものを見てきましたが……。
なんだかんだいって、大事なのはふだんの
“心に寄り添うかかわり”です。
子どもが、保育士と一緒にいる楽しさや心地良さを
たくさん味わうことが出来、
愛着関係の基盤を作るスキンシップをたくさん重ねること。
声を掛け(できる子ほど目立たなくなるので、意識的に声を掛けていく)
子どもの思いを大切にする対話を日々、重ねていくこと。
こういったことが、これまでの要素に 色濃く影響を及ぼしていきます。
~と、ここまでであっという間に予定の2時間。
最後に、みなさんから一言ずつ
ふだん心掛けていること・本日のまとめ・振り返りをいただきました。
「ふだん何げなくやっていることを体系立って振り返ることが出来、
頭の中の整理が出来ました。棚卸しして、後輩指導に生かしたいです。」
「新人を育てるのは、子どもを育てるのと一緒なんだなぁ~と気づきました。
(感慨深い一言!)」
「16人いたら、16通りの個性があるんですよね。
それぞれが違った行動をとっている……それを考えると、
もっと子どものことを知らなくちゃ!と思いました。」
「子どもの関心の“つかみ”が必要とは……。
考えたことがありませんでしたが、あらためて手遊びを学び直すいい機会になりました。」
「全体を見ながら、個を見るコツが知れてよかった。」
~といった声がありました。
そして……終了後は、全員参加の懇親会!!
それぞれの地域・園によって起こるドラマは様々あり。
感嘆の声あり、視野の広がる事例あり……という
有意義な情報交換タイムとなりました。