福島にて 研修を担当させていただきました。

今回のテーマは、
「保育士が働きやすい職場作り
 ~離職率を下げ、定着率を上げる採用戦略」。

テーマが深いニーズに刺さっていたようで、
このご時世の中でもリアル研修に申し込みがオーバーして
お断りさせていただいていたそうです。

「人がいない・・・!」
この、足下が崩れそうになる不安な感覚。
ある年、7人職員が退職することが決定したとき、
どうしていいのか分からず、かけずり回ったのを覚えています。

とはいえ、「人が欲しい」時に、
すぐに人が採れるわけではありません。

考え得る選択肢と手段をマインドマップで書き出して、
打てる手を片っ端から全て打っても、全く成果が出ず。

呼吸が浅くなる毎日の中で
「先生、なんとかして下さい!」と現場から突き上げられるあの感覚。

本部のご縁で仙台の専門学校に
プレゼン&面接をしにお邪魔した後、
「ようやく、3人見つかった・・・!」と思ったのもつかの間。
職員からは
「私たち、そんなに手厚くしてもらっていないですけど」と・・・きな臭いムードに。
育成?してもらってませんけど??という雰囲気。

いやいや、新しい人が入ってきてくれたら、
みんなが助かるんでしょ?
え、誰が教えるんですか?
私たち現場で一杯一杯なんですけど。

~ここから、まぁ次から次へと
課題のオンパレードになるわけです。

辞めてもらうわけにはいかないのです。
そんな余裕は存在しません。

じゃあ、どうするの?
辞めない仕組に園内を変えるしかないわけです。

とはいえ・・・
えっ、育成の仕方って、どうやって覚えてきたの?
見て盗め?
それって今どうなの?
これまで自分がしてもらった育成で良かったこと・
残念だと感じたことは?
~今からマニュアルや育成の仕組作りに取り組もう!

ーーーと、結果的に園内の仕組を見直していく中で
暗黙の了解や、古い価値観に
自分自身も囚われていたことに気がつき愕然としたり。

いろいろな方に知恵をいただく中で、
職員と一緒にやり方を見直していく内に、
結果的に離職がなくなり、紹介が出るようになりました。
「エクレスさんは、人を大事にして下さるので。」と。

横浜市のハローワークで 施設長最後の時期に 
就職説明会の講師をやらせていただいたこともあります。
(「先生の園で、働けるんですか?」とお声をいただき、
 私はいなくなるんですが・・・と申し訳ない気持ちになったことも。)

採用って、その場だけを見ると 
「人が採れるか採れないか」なんですが、それ以前に
「人が辞めない、続けられる 
 愛着のある園作りをどうできるか?」
という ”風土改革” につながる入り口なんですね。

もちろん、発信をして、採用ブースなど 
できる範囲で参加させていただくのは大事なんですが
表面だけ良くても、
中身(組織風土・システム)が変化していないと
負の離職ループへとつながってしまう。

内部のてこ入れと、採用。

両面を進めていく中で、結果的に 
職員にとって働きやすく、愛着のある園に変化し、
その雰囲気が新たな人材を呼ぶ魅力につながっていくのではないでしょうか。

今回、「今すぐ!」と感じている方には 
時間が掛かりますし
「あなたが変わって下さいね」ですし、
痛いところを突きまくりのテーマなので 
みなさん落ち込むかキレられてしまうこともあるかな、と
心配していたんですが・・・

しくじり先生炸裂の
私自身のイタイ気付きをシェアしながら
それぞれの理想の状態・課題・今からできそうな取り組み・
一方で園の広告ととして園の魅力をリフレーミングし
書きだして整理したり
距離・換気など対策を打ち、フェイスシールドをしながら
グループシェアで深めていく中で
「今まさに必要としていました!」
「暗黙の了解、ドキッとしました・・・」
「考えさせられました・・・」
「社会の変化を受け入れて
 まずは、自分がバージョンアップしないとですね」
~などなど、明日への一歩を持ち帰っていただけた模様です。

 
<レジュメから、一部ご紹介いたします>
 

1.定着につながる長期的戦略のポイント
 職場の環境は保育士の継続に影響が高い。
―保育者ケアからみる保育士の仕事に対するモチベーションと要因関係―

<保育の仕事を今後も続けていきたいと考えている人の要因>
・子どもと過ごす時間が充実している
・保育士としての将来像がイメージできている
・園運営の納得感/園・施設の理念や方針に共感できる
・社会への貢献感~仕事を通じて社会に貢献できている
        * 2017年リクルート 調べ *

~居場所・喜び合える仲間・成長・貢献・愛着がカギになる~

 1.急がば、まわれ
 2.課題はつながりあっている
 3.見たくないところに価値がある
 4.園システムは答えを持っている
      ~ 組織改革 ~
組織風土とは
 組織・園内の暗黙の了解、空気感
 組織において共通の認識とされる、独自の規則や価値観など
 
風土改革とは
 園を取り巻く外部環境の変化に対応し、理想の状態へ向けて
 構造・価値観・やり方を変えていくこと

2.人が辞める理由とは?

・保育を取り巻く社会状況の変化 
  ~経済の変化・家族/園との関係性・少子高齢化・指針の改定
・就職と求人状況
  ~「辞めないと入れない」就職から、保育士不足へ
・量から質へ、社会全体の価値観(働き方)の変化
  ~「残業は意欲の証」から「一人一人が豊かに生きる」社会へ
・保育の理想と現実のギャップ 
  ~やりたい保育が実現できる? 「個」と「集団」の現実
・経営・採用の視点と現場の視点
  ~現場は「今」「目の前の子ども」を見ている
・採用・経営の視点と現場の視点
  ~育成の課題と、「今」動ける人が欲しい現場
・継続・成長できる場か?
  ~暗黙の了解に「ここに居ても、これ以上は…」
・風通しのよさがカギ
  ~自園で一生?「他の園も見てみたい」

世の中は「諸行無常」、
「この世に生き残る生物は最も強いものではなく、
 最も知性の高いものではなく、最も変化に対応できるものである。」
   ―ダーウィンの進化論より

3.事前アンケートから~現状と課題~

うまくいっていること
  辞めずに続けてくれる職員がいる
  新しい職員が入り、園の雰囲気が良くなった
  職員間の関係性が良く、連携・コミュニケーションが取れている
  
課題と感じていること
  人数がぎりぎりで余裕がない、人が足りない
  現代の保育にしていきたいが、なかなか変えられない
  危機管理意識・勉強不足な職員を引き上げるには?
  特別な対応の子どもが増えている
  年代間の価値観・保育の在り方がバラバラである
  情報共有の課題、なあなあになってしまう
  3年前後で人が辞めてしまう
  育成の課題・若手の意欲を引き出すには?
  結婚・子育てで中間層がいない
  休憩が取れない、抜けることに罪悪感を感じる
  日々の仕事に追われ、働き甲斐を感じられず、疲弊している
  サービス残業をなくしたい
  子どもの人数が少ないため、職員が手持ち無沙汰になることがある

4.園の理想の状態から、明日への一歩
 変化し続けるのが自然の理、課題は軌道修正のサインと捉える。
 子どもたちは、20年後の未来を生きる存在。
 今の環境に合わせた園風土を、職員とともに構築していく。
   ~保育者こそ、クリエイティブ(創造的に)、身近な一歩から~

*ロバートフリッツの緊張図より*
<理想の状態:ヴィジョン>

<クリエイティブテンション:創造的緊張>
理想の状態へ向けたプロセス

<現在の状態:リアリティ>
客観的な現状分析

5.人を責めずに、システムを変えるアプローチ

繰り返し起こる出来事には“パターン”がある
 EX:新しい人が入ってきても、続かず辞めてしまう
   ―――どんなパターンがある?

 

パターンを引き起こす、システムの深い構造がある
 EX:既存の職員が日々に追われ、新しい職員まで手が回らない
   → 孤立してしまう 居場所がない やりがいが感じられない
   ―――どんな構造が、園内にある?

構造を引き起こすメンタルモデルがある
   
 EX:「先輩の背中を見て、自分で覚えるものだ」
     「有給という言葉を発してはいけない」
     「熱があっても、這ってでも出勤する」
     「よい保育者とはーーー」「残業はして当たり前」
   ―――どんなメンタルモデルを持っている?

 ~ それは本当ですか? 今 必要ですか? ~

6.捉われに気づき、新たな価値観を受け入れるために

社会・時代の変化とともに、園内の在り方も見直しが必要
その時は必要だったけれども、いまは必要でないものもある

~ 大切にしたいものを握って、やり方は、どんどん変えていい ~

 ・大切にしたいことはなんですか?

 ・手放しても良いことはなんですか?

  ~Doing とBeing

多様性を尊重し合える柔軟な組織へ
   ●職員間の個性・温度差・価値観の違いを踏まえ、豊かさとして生かす保育

   ‐男性/女性
   ‐新人/中堅/ベテラン
   ‐20代/30代/40代/50代/60代
   ‐生え抜き職員/他園を経験した職員
   ‐保育の道一本/異業種からの転職
   ‐保育に思いを持っている人/仕方なく保育をしている人

 *共通点は、○○○のために
 ~違いを生かすには、一人一人の声として「エッセンス」を集めていくこと

 園システムは、答えを持っている
~園の理念を真ん中に、職員間の対話からできることを見出していく~
経営者と現場の視点のかい離を防ぐ「自分ごと」対話を

7.働きやすい園へ向けた長期的な計画

【あなたは園の広告塔】~ 園の魅力・特性を語れますか?
 目的 : 園文化・価値観を現場へ棚卸しし、差別化できる付加価値に気づく
 ●背景
 ・経緯
 ・歴史
 ・地域の中で    
 ●大事にしていること
 ・取り組み        行事など
  ・文化    日舞・茶道・カツオをおろす・プロレスラー…etc
 ・誇りに感じていること
 ●園の理想の未来像
 ・今後、園がこうなっていくといいと感じること・
  そのための課題と感じること
リフレーミング
     事実は同じでも、捉える枠組み
     (フレーム)を変えること
     =ものごとを別の角度から捉え直す

<園の魅力を書き出してみましょう>

【選ばれる園であるための情報発信】
<方法>
・園だより・掲示板
 ・HP
 ・ブログ
 ・SNS
 (Facebook、Instagram、Twitter、Line etc…)

< 目的 > 
 ・認知の機会、応援者を増やす
 ・対象者を定め、対象者が知りたいことを発信する
  ~相手が知りたいことを
  ~自分たちにとっては当たり前のことでも、
  相手にとっては発見がある(初歩的なこと・専門的なこと)
  ~タイムリーな情報提供
 ・採用情報の発信
NG:個人情報・批判・誰かが不快になる発信

< 内容 >
 ・子どもの様子・エピソード
 ・理念・取り組み
 ・専門職からのアドバイス
 ・環境紹介
 ・周囲との関係性
 ・先輩職員の声
 ・採用情報

*理想の状態 いつ頃、どんな状態になっていたら良いか?