「企業に保育園があったら、子育て中の父親、母親に心の余裕が生まれ家族が幸せなのではないか。」
~といった発想で、10年前に保育業界での起業し、
ファザーリングジャパンの「父親であることを楽しもう」に共感して
一年目にイクボス同盟に加入したという小津さん。

イベント保育から始まって
企業主導型保育を福岡・長崎を中心に6園展開されています。

保育の専門家と提携し、現場で課題となることについて
相談に乗ってもらったり、研修をしてもらう仕組みがあり
保育者は安心して保育に向き合うことができるそうです。

様々な業界のつながりや、斬新な取り組みにお声掛けもあり、
現在、福岡大学の学生さんと一緒に保育スタッフを笑顔にするプロジェクトもしているそうです。

~そういった予備知識を

元に、まずは一園目のあじや保育園~OHANA~へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母体であるお弁当屋さんを身近に感じられる環境の中で
子どもたちは好奇心あふれるままに、
にこにこと人懐こい笑顔を見せてくれていました。

一園目の園長先生を始めとして、現在働いている職員さんは、じつは
当初 保育士としての求人ではなく、
イベント保育の募集で入ってきた人が多いそう。

子どもが小さい時期、最初は、
旦那さんが休みの日(土日)に子どもを見てもらえる間
働くことができるイベント保育が入り口だったようですが
子どもが少し大きくなって保育園・幼稚園に通うようになると
母親にも時間ができるため、日中働けるようになり
雇用形態が保育園の平日日中勤務へと変わってきたそうです。

人生の中で波があるように、
人にも出産や子育て・介護と働き方に様々な波がある。

会社も一人一人の波と寄り添うことを大前提としながら
シフトや体制など経営の形を考え、マネンジメントを行っているそうです。

この日も2人の職員のお休みが前日に急きょ決まったが、
みなさんの「オタガイサマ」精神によってシフト変更が行われ、
スムーズに保育ができているそう。

お子さんの発熱や、急なご不幸など……いろいろありますよね。

そんな時、多くの保育現場でもみんな、協力してシフト調整を行っていますが
興味深いのは、この「オタガイサマ」に
職員本人だけではなく、職員の家族が総出で
積極的にシフト調整に協力しているというのです。

その理由は……
園長先生の提案で、保育園が新設スタートする前に
職員の家族同志が顔合わせを行う機会を設けたことが大きいそう。

そのため、「あの子が熱?」など、何かあると
お互いの家族の顔が思い浮かび、状況がイメージできて、
「それは大変だ!」と自然と協力の体制が生まれてきているのだそうです。

そうしたことが結果的に「お互いが働きやすい」労働環境の良さに
つながってきているそうです。

この、「イメージが浮かぶ」ということが大切で、
「何かしてあげられないだろうか」といった気持ちになりやすいのだそうです。
一般的に職場ではプライベートは見せないところも多くありますが…。
だからこそ お互いを思いやる「オタガイサマ」につながりやすい、
というのが とてもいいなぁと思いました。

また、職員の6年生になるお子さんが
「お母さんの職場で働いてみたい!」と自発的に手を挙げ、
夏休みの自由研究に 保育園で一日先生を体験していったとのこと。
その時間を振り返るほっこりとした空気間に、
お互いの家族の成長をともに喜び合う仲間であることが伝わってきました。

こちらの園の母体であるお弁当の「あじや」さんも、そのお話を聞いて
「良かったらぜひ、うちの会社でも!」と言ってくださっているそう。
依頼くださる母体企業さんも、オズカンパニーと価値観が似ているそうで、
価値観が近い組織が力を合わせることに心の通う豊かさを感じられました。

そんなオズカンパニーの小津社長に
「心がけていることはなんですか?」と尋ねると……

「人を生かす経営」とのこと。

「現場がアイディアを出してくれる。
社長はそれを、後押しする。
やってみたらいい。
そうすると、どんどん好循環が回ってくる」とのことでした。

企業立の保育園は、保育士の資格を持っている人の割合が50%。
半分は資格を持っていない先生だそう。

そうすると、気になるのは 保育の力量の差。

保育士が足りない、朝晩のフォロー要員として
無資格や教員の資格を持っている人にも門戸を広げる、といった方向性が発表されたときに
私は横浜のこども園保育園部 施設長で
「人がいっぱいいても、動けない先生ばかりでは意味がない」
「保育の質が下がる」
という声を耳にしたことがあるのですが……。

「ここでは、だれと組んでも
どの人と一緒に保育をしても大丈夫という安心感があります」
~と、園長先生。

保育士でないみなさんは自分の時間で保育指導員研修に行き、
印象に残ったことを「共有したいんです!」と
職員会議で発表してくださる方もいらっしゃるそうです。

そのモチベーションの高さはどこから?

今まで出逢ってきた非常勤職員の中には、
「なんで自分の時間で勉強しに行かなくちゃいけないんですか」
「お金が出ないならいいです」
~という人もいるというのに。

こちらでは同一賃金を基本として保育しているため
(園長延長手当、保育資格手当、保育指導員手当、地域手当などは別途加算される仕組み)
全員が変なわだかまりを持つことなく、
保育に一丸となって取り組むことができているそうです。

オズカンパニーが大切にしていることは、
現場ありきの「チーム保育」と
「何のために?」と保育や事業の在り方を常に問い続け、
軸を持ち、理念を自分に落とし込んだ行動を行うこと。

職員会議など、ことあるごとに社長が熱く語るのを耳にする中で、
職員にも理念が浸透していき
自然と一貫性のある保育が行われているそうです。

「笑顔のサイクル~
~保育士の笑顔・お子様の笑顔・パパママの笑顔・企業・社会の笑顔~」
という理念を大切にしており
それをしっかりと理解したマネージャーさんが各園を回りながら
職員会議の最後に
「左隣の人のいいとことを3つ褒めましょう」
「ストレス発散の方法は?」
~など、“人”に焦点を当てて
お互いがプライベート設け止め合えるような
きっかけづくりをしてくださっているのも、
雰囲気の良い場作りに貢献しているようです。

 

 

 

 

 

 

とはいえ、“理念”と“現実”---なかなか一致せず、
経営者と現場が乖離することによって
離職率が高くなる保育現場も多くあります。

オズカンパニーでは、どうやって
理念の好循環を実現しているのでしょうか?

大切なのが、社長が腹を据えること。
現場はそんな社長の姿勢を見ています。

たとえば、園の一年間のお金の流れを職員に説明する。
損益計算書を見せながら、分かりやすい言葉で伝える中で

みんなで頑張って目標を達成したから、
その結果 チームみんなへと還元されるんだよ、と。

力を合わせて頑張ったことが処遇に反映されていることを
現場も理解して、経費を抑えることをはじめとしたさまざまなことに
一人一人が意識を持って取り組んでいく流れができているんですね。

ちなみに---
社長のお給料が園長先生など管理職に公開されたときには
見ていいのか…とドキドキしてしまった、というお話もありました★

また、職員が残業をせずにちゃんと帰ることを推奨し、
家庭のことや様々な世界と触れ合う時間を大切にされているそう。

世界を見ることでお互いの多様性を受け入れる機会となり、
情報収集をする中で現場や経営に生きるアイディアが生まれてくる。
それを職場に持ち帰ることで組織がどんどん成長していく---
‐‐そういった流れを大切にされているそうです。

中には、「私は門番よ」「〇〇担当なの。」というように
自ら役割を名付けて楽しんでいる職員もいらっしゃるとか。
そのチームの中で自分の役割や貢献できていることが見えてくることで、
さらなる意欲へと自然とつながっている様子も微笑ましいですね。

また、小津さんは
中小企業同友会にて「人を生かす経営」を学び合い、実践される中で
『人が生きれば、組織は成長し続ける。』ということを、実感されているそう。

とはいえ、ここに至るまでにはいくつもの紆余曲折があったそうです。

企業の中に保育園を作りませんか?と会社を訪ね歩いても、
「実績がない」となかなか受け入れてもらえない毎日。

そういった中で、まずはと
ニーズのあったイベント保育から始めて行きました。

そうした中で、いよいよ第一園目として、
もともとあった病院の院内保育所を委託を受ける形でスタート!

当初、なかなか統制の取れない悪循環の中で負荷が掛かり、
人がどんどん辞めていく悩ましい時期が続いたそうです。

期待して園長にと据えた人を育てようとしたものの
分散したはずの業務を周囲が負いきれず
結局、園長に一極集中するようになり、本人からSOSが。

ここで、園長の業務を減らすために、
ギリギリの中で売り上げが減るのを覚悟で
余剰人員を入れ、その他の仕事ができる時間を創ったところから
現場の流れが変わってきたそうです。

そう、見られていたのは、社長の「あり方」。
どこまで本気で向き合う気があるのか---

その姿勢が伝わった時から、
現場にゆとりが生まれ、笑顔が増えて行く中で
小津さん自身に、こんな気づきがあったそうです。

「そうだ。これは、自分自身が掲げていた理念じゃないか。」と。

父親、母親、子どもたちの笑顔のためには、職員が笑顔でいること。
笑顔でいられる環境をきちんと作ることが、社長の役割なのだと。
そこに気が付いてから、
現場ありき・人ありきの保育の現場が輝くために
何ができるのかを考える毎日だそうです。

小津さんの体験談には非常に説得力があり、
園長先生の集まる勉強会などで小津さんの経験談を話してもらうことで
勇気づけられる人が多くいるのではないかと、妄想する私だったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、お昼ご飯に本場の一風堂の味を楽しんだ後は

飯盛山のふもとにある
医療・介護福祉などの法人を母体に持つ「サンサン保育園」へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

キラキラした目のキュートな園長先生が笑顔で迎えて下さりました。

私の方の訪問の趣旨をお伝えし、いくつかの質問をさせていただくことに。

<働き方について>

それまでは一般的な保育園に勤務していたという園長先生。
通常、保育園はフルタイムの職員がメインを固め
その周りに非常勤やパート職員がいる…という形式が多いが、
ここでは 園の母体の考え方・形態によって
必ずしもフルタイムの職員がメインで働いているわけではない園もあるそう。

企業主導型保育園ということで、
母体に合う形で一園一園がそれぞれの形になっているのが特徴的ですね。

お父さんお母さんが笑顔で働けることが第一であり、
そのためにはスタッフである職員が笑顔で働けることが一番。

職員それぞれが使命感を持ち、自らの役割を全うしている。
それが、チームの一体感につながっているのではないか、とのことでした。

いまはフルタイムで働いている職員も、
子育てや介護など、いつか制約社員になる可能性がお互いにある。

そういったときに、「オタガイサマ」の精神で
チームで成果を出していけばいい。

お互いが気持ちよく働ける、輝ける、そんな職場づくりを心掛けているとのこと。

オズカンパニーでは、
各園の園長先生たちがそれぞれの悩みを抱え込むことがないよう、
三か月に一度、園長同志が集まってお互いの園の周辺に持ち回りで
情報共有や相談・懇親会を行う「オズサミット」が開かれているそうです。
(遠くからくる人は、泊りがけで来るそうな。)

これがあることで心が救われ、
お互いの顔を見て安心し、信頼関係ができた上で
各園がそれぞれのヒヤリハットをUPして気を付け合ったり、
困ったときに相談が出来る【サイボウズ】の活用、
【LINE】の活用が生きているとのこと。

それ以外にも地域ごとの共通の役職同士が集まって
ご飯を食べることもあるそうで、
こういった人と人とのつながりを大切にしているのが伝わってきますね。

<業務の効率化について>

園の取り組みで好循環につながったきっかけは---?というと、
「事務スタッフを置いたこと」。
(現在は事務スタッフのことを「ボランチ」といっているそうです。
・・・サッカーでいうボランチと同じような役目のため)

保育者は事務が苦手な人が多いのですが、業務負担の軽減に直結し、
それはそれは助かっているそうです。

事務のスタッフが来てくれたことで、
それまでは園長先生がやっていた事務がなくなり、
散歩のときなどには、
毎日掲示をしている子どもの日常写真のカメラマンとして同行してくれたり。
沐浴上がりの子どもたちを補助的にサポートしてくださるなど、
「事務だからここまで」「これは私の役割じゃないので」という考え方はせずに
「みんなで、お互いを助け合う」というチーム保育の考え方が根付いているのも
保育がやりやすい要因の一つなのでしょう。

<モチベーション高くいられる理由>

以前の園では終わらない仕事に持ち帰りの仕事…心が休まる暇がなかったが、
ここでは工夫をして仕事を業務時間内で終わるように協力体制ができており、
「休みの日は、ちゃんと休める」という安心感で、頑張れるのだそうです。

しっかり休んで、家族がいる人はお母さんとして、
子どもたちとかかわる中で充電することができる。
これが、次のいい仕事につながるのですね。

また、園長など 有給がたくさんある人はそれを使えるように
属人化しない仕事の仕方を普段から心がけているため、
立ち上げ当初はバタバタしたものの、今は安心して休むことができるそうです。


<社長という存在>

そんな現場の先生たちにとって、
小津さん=社長は、いったいどんな存在なのでしょう---?

「最後の砦」「困ったときに、必ず登場してくれる人」
なにかあって相談をした時にも、
「現場としては大丈夫なの?」「どうしたいと思っているの?」
~と意向を聞いて下さることに、
「こんなに考えてくれるんだ!」と始めは驚いたそうです。

また、収益が上がった際 先に園長たちの給料をUPさせたことで
「社長、その給料でいいんですか!?」
・・・と問題視する声が園長間で持ち上がったことも。

会議やその時々で顔を合わせる中で、敬意を払いながらも
時折「ね。」とお互いにお茶目に意思を確認し合う
心の距離の近さが印象的でした。

まだこれからも新たな取り組みもあり、課題もあるそうですが、
「ゆっくり仕組みを作っていこう」とおっしゃる小津さん。

何より、理念を社長自身が体現し続けることことを大切にされており、
まずは自分自身が 早く帰って家族と過ごしたり
さまざまなつながりから情報収集をし、会社の未来につなげることで
職員の笑顔を生み出していく。

通常の保育だと頭打ちになる成長も、
複数の園があり、時代の変化とともに未来から必要とされる形になることで
保育士にとっても成長のチャンスがある。

「成長できる、って大事ですよね。」と、園長先生。
スタッフが働けば働くほど利益が広がり、笑顔の輪が広がる。

そんな未来を
チームオズ全体で目指しているのだということが、
伝わってきました。

お話を聞かせてくださった小津さんをはじめとしたチームオズの皆様。

ご縁をつないでくださった、ファザーリングジャパンの川島さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

貴重な機会を、どうもありがとうございました!