川崎市中原区にある「すみのえ幼稚園」は、昭和41年に田畑に囲まれた地域で、自身も農業を行っていた初代園長の、農業に携わる親のために「親が畑仕事をしている際、子ども達が野良犬に襲われず、安全に過ごせる場所を提供したい」という思いから、創設されました。
今は、子ども達の「みたい・知りたい・やりたい」という声を活動につなげ、地域に学びに出かけたり、ときには特技や資格を持つ保護者の方のご支援のもと、子ども達に体験する(茶道や器楽演奏、ドッグトレーナーさんなど多彩な)機会を設けていただいたり、先生たちからの「あの園の保育を知りたい・学びたい」という声から、他園での学びをワクワクしながら体験し、保育実践に活かしていこうとする、風通しの良い園風土に魅力があふれる素敵な園です。
職員の反発に葛藤した4年前
そんな、地域の子どもたちの笑顔を支えてきたすみのえ幼稚園も、4年前には職員室に閉塞感が漂っていた時期があったといいます。
すみのえ幼稚園の先生は当時のことを、「園全体のコミュニケーションが不足し、保育理念や情報の共有が十分に行われていませんでした。その結果、組織として十分に機能せず、子どもたちを思う気持ちが強いが故の苦しさを、職員たちは抱えていました」と語ってくださいました。
例年同じ保育計画に則ることや、それまでの慣習や固定概念にとらわれており、コロナによる2ヶ月の閉園後、再開に向けての職員の打合せでは、保育者それぞれの保育や子ども達への思いがひとつにならず、全体で共有し、形にしていくことが困難な状況だったとのこと。
この状況を受けて、すみのえ幼稚園ではコロナを契機にICT化や働き方改革、業務改善に取り組みましたが、職員の意識改革は容易ではなく、持ち帰り仕事や残業が当たり前の職場環境を変えることは困難で、「先生主導型」保育から、新しいかたちの保育「子ども主体の保育」への移行を目指しつつも、その変革に必要なエネルギーを生み出すことができなかった、と当時を振り返ります。
すみのえ幼稚園さんの体験談
上記の状況で変化を強く求める中、「このままではいけない!」と一部の職員が、保育経験、施設長の経験を経て、保育コンサルティングをされていた、松原先生のウメハナチャイルドケアコミュニケーションズに辿り着いたんです。
数あるコンサルティングの中で、コミュニケーションはもちろんのこと、組織マネジメント、人材育成、研修、子育て支援、過去の実績に至るまで保育全般に関わるコンサルティングをしていることや、保育環境の土台の再構築や仕組み作りを学びたい、現状をとにかく改革したい思いでいっぱいでしたので、すぐに連絡を取り、現状を伝えたところ、大らかに受け止めていただき、先ずは安堵したのを覚えています。その後、園見学や管理職との面談を経て、改革の道がスタートしました。
これまでは、それぞれが内側で課題を感じながらも、解決の糸口が見つからずにいましたが、思いつめていた気持ちを言葉で表し、じっくりと聞いてもらえたことで心が軽くなる感覚を味わいました。
「皆が願う方向は同じだったんだ」と実感しました。
研修を受ける中で印象に残ったのが、“コミュニケーション”の奥深さです。
『もしかして、自分たちのコミュニケーションに原因がある?』
『園が変わる糸口は自分の中にある?』
ウメハナの定期的なコンサルセッションと研修を通じ、職員たちは「自分たちもコミュニケーションやコーチングを学ぼう」という意欲を持ち始めました。管理職は保育コミュニケーション協会のコーチング講座や園内ファシリテーション育成講座を受講し、「一人一人が内側に答えを持っている」ことに気づき始めたんです。
それにより、職員全体で園を取り巻く状況を共有し、当たり前と思い込んでいた日常の慣習を振り返り、少しずつ変化が起こり始めました。
これまでは起きてしまった出来事に対処し、相手をどうするかを考えることが主でしたが、実は「自分の中に答えがある」と気づくことで、状況を俯瞰的に捉えられるようになってきました。これまでの研修では、ただ受け身で誰かに正解を教えてもらうものだと思っていましたが、ウメハナの研修では『自分で体験し、学ぶこと』によって、それぞれに「気づき」が生まれ、それが園の変容につながるきっかけとなっていきました。
研修を受けての感想
<主任>
松原先生の研修やコーチング、ファシリテーター育成を受けたことで、園内のコミュニケーション不足が解消され、職員がチームとして動けるようになりました。今では園の理念に沿って、皆が同じ方向を向いて笑顔で活躍している姿が見えるようになっています。
コミュニケーションの奥深さを日々実感しています。職員同士や保護者への関わりも、人としての向き合い方は大人も子どもも同じであるということに改めて気付くことができました。
「誰のために、何のために」という問いを持ちながら、これからも一つ一つの課題に丁寧に向き合い、一人一人の個性を生かし、認め合い、子どもを真ん中にしたチームとして、子どもたちを見守っていきたいです。
<現園長先生(コンサル当初より代替わり)>
かつては頭で考えて止めていましたが、手探りでもまずやってみる。行動することにより後で思考が付いてくる…というのを実感しました。
『こころを見る事、感じる事』を大切にしたところ、自分の内側から、変化するのを頼もしく感じました。
『視点を広く、ありのままを受け入れる』
~まずは自分が変わる事が最初だと気付きました。
魅力あふれる今のすみのえ幼稚園
今では園長も変わり、 幼少期の遊び体験をじっくり尊重する園として地域から親しまれ、卒園児が嬉しい成果をもって先生たちに会いに来てくれるそうです。
園長先生に「この先地域と共に、どうありたいですか?すみのえ幼稚園をどのようにしていきたいですか?」
…と質問してみたところ、
これからは「先生達自身も主体性を持った職場に変えていきたい」と笑顔で応えてくださいました。
「地域開放や卒園児の受け入れ、不登校の子ども達には学校だけではない安心できる場であるような、色々なつながりを持って地域全体で居場所を作っていきたい。子どもだけではなく保護者にとっても居場所になれるように、地域の人と子ども達が来てくれる園になってほしい」と語ってくださいました。
『子どもを真ん中に…』
少子化の影響で苦境の続く幼稚園業界。
そんな中にありながらも、「ここに集う人たちが今日幸せだと感じる事が出来る幼稚園。そんな場所であり続けたい」 と話す先生方のキラキラと輝く瞳が印象的です。
すみのえ幼稚園さんのこれからの活動も、要チェックです!