保育士コミュニケーション講座にて、
「難しい保護者への対応の仕方」終了いたしました。

「難しい保護者」とは・・・じつは
HelPを出すのが苦手な方たちであり、
コミュニケーション下手な方であり、
周囲との関係性を築くのが苦手な方。

「子育て支援の重要性が高い保護者」であり、
じつは、ご自身が一番、「困っている」方たちなのではないでしょうか。

表面的な言葉のやり取りに目を奪われると
「えっ?!」
~となりますが、その背景にあるものに思いを馳せ、
視点を変えることによって見えてくる対応策がある---。

また、ふだん私たちが行動選択している意識は「一次意識」であり、
それとは異なる「二次意識」の領域に入った時、
保護者側も、保育者側も「えっ?!」「あり得ない!」などと
戸惑いを感じることがあります。

そちらについても事例を用いて紹介したことで、
みなさん、腑に落ちる部分が多くあったようです。

今回は、事例として実際に保育園で対応をしていて
「う~ん」と声が上がっている事例をいくつかピックアップし、
そこをひも解きながら研究会のように
新たなかかわり方のきっかけが見えてくるのを
一緒に感じるひと時となりました。

<以下、レジュメよりご紹介します>

保育士コミュニケーション講座
「難しい保護者への対応の仕方」

1. ●さまざまな保護者と、その背景
難しい保護者とは・・・

時代の流れと家族形態の変化・サポートが得にくい環境・・・
行き詰まりを感じる保護者
⇒相手を知ることで、見えてくる本当のニーズに寄り添うこと!

◆難しい保護者が抱える、共通の課題
「○○○が出せない」
「○○○○○○○○○下手である」
「人との○○○を上手に築けない
~難しい保護者ほど、子育て支援のニーズの高い人である

◆この時間に目指すこと
・難しい保護者と話しやすくなる空気のつくり方がわかる
・保護者の背景をイメージし、情報収集することで対応策の目途が立つ
・保護者を観察・把握する客観的な視点が身に付く
・保護者と向き合った時に、プロとして堂々と対応ができる自分になる

<保護者対応に関して感じていること・終了時に目指す状態>

2.難しい保護者とかかわるうえでの4つの視点

対応する際のスタンス

1. 情報収集 ~相手の背景にあるものを想像する
・児童養護:成育歴
(ここに至る経緯・子どもを取り巻く環境・父母の生育環境等)
・保育園:生活調査票
(家族構成・緊急連絡先・家族の写真・育ってきた過程など)
~家庭を取り巻く諸環境がかかわりの鍵になる。

2.観察
・日常のかかわりの中での情報の蓄積
受け入れ時の様子・面談時の様子・有事の反応等、
行動傾向を園内の脳内データに蓄積していく

・職員間での情報交換・情報共有は必須!!
早番遅番等含め、園全体が同じ認識で対応方法を統一させていく必要がある。

3.ニーズを捉え、仮説を立てる
「こういう事情があるから、
こういう行動をするのではないか?」
「こういうニーズがあるとすると、
こういうかかわり方が有効なのではないか?」
~前提として踏まえ、作戦を立てる

●どういう傾向にあるのか?

●背景は?

●かかわる中で気を付けることは?

●保護者の今後の理想の状態は?

【表面的なやり取りの奥にある“相手の本当のニーズ”とはーーー?】
ニーズ:相手が本当に求めていること・必要としていること

・お腹が空いている → 早くご飯が食べたい
・時間がないと感じている → ゆとりが欲しい
・承認してもらいたい
・不安を解消したい
・子どもと向き合うのが苦手・・・できれば事なきを得たい
・面倒くさいことはしたくない → 快適

大切なのは、表面的な出来事に翻弄されるのではなく
「心の奥のニーズを捉え、受け止めながら 協力体制を築く」こと

4.トライ&エラー
~情報の蓄積から傾向を導き出し、対応策につなげていく
*仮説に沿って関わってみて、結果どうだったのか。

●上手くいったら・・・その仮説に沿って、今後もかかわっていく。
●こじれてたら・・・今回のこともデータベースに入れて情報を再構築し、
別の視点や仮説から作戦を練って対応をしていく)

3.信頼関係を築くかかわり方
心の扉を開くかかわり方
~こちらのペースではなく、相手に合わせるかかわり方
⇒信頼関係は、相手の心に寄り添う体験の積み重ね

●ベースはペーシング
ペーシング
無意識に行っている行動を相手に合わせていくことで、
相手は自分に近いと感じて安心する。
信頼関係によって心を開き相手の存在・言葉を受け入れやすくなる。

「こういう人には、こういう関わり方がベスト!」というマニュアルはない
人はそれぞれ背景や個性が違い、時と状況によっても変わってくる
~諸背景を踏まえた上での生のやり取りが重要である。

4.一緒に考えるスタンス
正論を押し付けるのではなく、共通のゴールを見出すこと。
⇒それぞれの立場から知恵を出し合う“子育てチーム”チームとして知恵を出し合う

<園内の“ライン” の共有>
●この問題の論点・課題は何か?
ex:厚意と権利の線引き、連絡の行き違い、危険の可能性、保護者のエゴ、など

●保護者の願い・ニーズは何か?
ex:子どもの成長を見守りたい、不快な思いを解消したい、不安を解消したい

●園として、大事にしたい事は何か?
ex:安全確保、の社会性、

●大事にしたい事を守るため、歩み寄りが可能なのは?
ex:10分まで、園の玄関まで、お預かりするところまで、
電話を入れるところまで、厚意のラインはここまで、など

<保護者との“目的”の共有>
‐大事にしていること
‐今後につながる子どもの可能性
‐園としての思い
‐心配していること
‐それによって園・ご家庭にもたらされる可能性のあるリスク
‐できないこと

<園と保護者の歩み寄りラインを見つける>
利害の相反する者同志ではなく、一緒に子どもの成長を願う者同士として
「今後に向けてお互いに何ができるのか?」を、一枚の絵を見るように検討する

5.リクエストとして捉え直す
理不尽に思える要求も“リクエスト”として捉え直すと、新たな展開が見えてくる

1.相手の感情と自分の感情を分けること

A.相手の中に起こっている感情を、客観的に観察
Ex:「怒り」「不安」「不満」…
相手の心にアンテナを立てて感じること

B.相手に向いていた矢印を、自分に向け、自分の体感や感情を感じてみる
Ex:「動揺している」「不安を感じている」「傷ついている」「ショック」
自己管理を丁寧に行う

~両方を分けて感じることが、相手に巻き込まれないためのポイント。

2.批判と捉えず、相手が感じたこととして客観的に受け止める

自分の内側で自分の状態をモニタリングし、
言葉の上では「相手が感じていること」を客観的に受け止めてみる

「不安に感じられたんですね」

その上で・・・

3.リクエストと置き換える、願いを聞き取る
相手の感じていたことの奥にある「ねがい」や思いを探り、
「リクエスト」と置き換えて考える

「 」
リクエストとして置き換えると?

<ワーク1>

「ある朝、時間がないことを保育士に伝えたら、
みなさん、オムツ換えをしていかれるんですけど・・・と言われた。
オムツの取換えのた めに会社を遅刻し、処分を受けた場合には、
市や保育所に賠償をもとめることができるのか、
また、遅刻証明書など法的に効力を持つ証明書の発行ができるの か」
と連絡帳に書かれていた。

●保護者の“ねがい”は?

●園・保育士として大切にしたいこと・ラインは?

保護者対応の一場面をロールプレイ!
<保護者側の気付き>

<保育士側の気付き>

6.振り返り・まとめ

<まとめ・印象に残ったこと>

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<以下、参加者の声を一部 ご紹介します>

・ムリ→できるかもになってもらう為に
どれだけ提案ができるかという所はなるほどと思いました。

・保育士、保護者、それぞれの立場に立って理解をし合う、というスタンス、
クレームとは受け止めず→「リクエスト」と置き換えて考えるというのが印象的でした。

・イラストや事例を取り入れていてより伝わりやすかったです。

・一次意識、二次意識の部分がとても分かりやすかった。

・具体的な事例がありイメージがしやすく理解がしやすかった。

・保育士はコミュニケーション能力、
場合によってはカウンセリングのスキルが必要だと思いました。

・忙しい保護者に対しての承認や受け入れる気持ち再認した。

・保護者の置かれている状況を理解し、
お互いに譲り合って気持ちを受け止めることが大切だと感じました。
それを相手に伝える技術も必要なので、経験を積んで習得したいです。

・園で困っている保護者がいるので、
どんな状況が良いのか悩んでいたが要求通りにするのではなく、
情報提供も大事だと気づけたので良かった。

・クレーム=嫌な保護者、苦手な保護者…と思っていたが、今回の講座を受けて
クレーム=教えてほしい、助けてほしい…のサインだという事に気が付かされた

・とても必要なのが、保育士同士の情報交換だと感じました。

・保護者の意見、気持ちを汲み取り
その言葉の裏に何があるのかを考えてみたいと思います。

・難しい保護者とのかかわりの突破口が必ずあると光が見えてきました(笑)
怖がらず、声掛けしたいです!

・言葉の奥にある背景やニーズを考え一緒に歩みよりながら対応していきたい。