今日は3月11日。
東日本大震災から7年目になります。

今日の日にちなんで、
昨年の保育実践コミュニケーションの受講者から頂いた質問

「園の避難訓練で見直せるところはどこでしょうか?」

~を一緒に考えてみたいと思います。

* * * * *

じつは、私自身 北海道から上京をする際に
「関東は地震が来たら割れるんだよ!それでも行くの!?」
~といわれながらも出てきた経緯があり、かつ、相当なビビリです。

横浜市都筑区の保育園で施設長をやらせていただいていた時には、
5年以内に70%以上の割合で来る』といわれていた
首都直下型の災害が起こった時の
ハイドリームとロードリームをそれぞれ考えました。

●ハイドリーム(最高の状態)
=揺れはするけれども、そんなに支障なく
備えてあるもので日常生活に戻れるレベル

●ロードリーム(最悪の状態)
=これは、我ながら根暗だなぁ~とうんざりするくらい
何パターンも考えました。

EX:1
大きな揺れで私も事務長も机の下敷きになり、血が流れ苦戦する中で…
子どもの安否を心配しながらも…
先生たちだけで子どもを集めて避難、そこに地域の人が…
電柱は倒れ、電気はなかなか復旧しない中で…

EX:2
非難した先のせせらぎ公園はいろいろなものが隆起していて、
散歩先から合流するのに時間がかかる状況…

~などなど。

はじめのうちは、私のこの呼吸が浅くなるような危機感と
他の職員たちの温度差がかみ合わず、
「はぁ?何めんどくさいこと言ってるんですか」といった調子でした。

3.11は、関東でもそれぞれが体験しているのですが
「喉元過ぎれば熱さ忘れる」状態にになっていたようで

たとえば---

・避難訓練の日にはあらかじめ散歩者に乗れるように準備をしておく
「おかしくないですか?」と声を掛けると、
「だって、先生たち大変でしょ。」とかみ合わない。

・避難訓練自体の想定がマンネリ化しており、
「あれ?先月もこの時間・この揺れのかんじでしたよね?」
「だって、人がいるときにやらないと、避難できないでしょう」
~それじゃ、訓練になりませんから!

・あれ?なんか先生たちがそわそわしている・・・って、えっ!!
朝のうちから避難訓練に備えて、
逃げやすいような準備やチームワークをはかってますよね?

~などなど。

これ、後で気づいたんですが
意外と「保育園あるある」かもしれません。

憤りを感じる私が空回りしてしまう状況が最初のうちはありました。

が。
そうこうしているうちに、変革のチャンスがやってきました。

福島の保育園で、実際に子どもたちと3.11を体験された先生が、
お引っ越しで私たちの園に勤めてくださることになったのです。

当時、どう見直したらいいのか・・・付箋だらけだった防災訓練の現状を
その先生に見ていただき、率直な感想をいただきました。

「先生---こんなもんじゃないよ。」

・突然の揺れに大人も叫び声を上げて助けを求めていたこと。
正気を保っていられたのは、子どもを守らなきゃという使命感に駆られたから。

・子どもを連れて外に出た時・・・
雪残る園庭での、時間が経つにつれてしんしんと迫る冷たさ

・地震は一度だけではないこと。
本震ではなく、ほとんどの建物は、余震で壊れていたこと。
余震は前後にも継続的に起こり、
むしろ 本震よりも重なる余震によって揺らされてもろくなっていったこと。

・夜中でも揺れが起こったら飛び起きて外へ出る状況があり、睡眠不足に。
揺れているのか収まっているのかが
自分でも分からない状態になっていたこと。

・スーパーが再開してからも、朝5時半から1時間半以上列になって並んで、
ようやく少しの食糧を手に入れることができる状態だったこと。

~などなど。

すごく響いたので、
「先生、その貴重な体験、私たちの今後に生かさせていただきたいので
お話しいただけませんか?」
・・・と、いつものなまっちょろい避難訓練の最後に
お願いをして、話していただきました。

そこから少しずつ
先生たちの意識が変わりはじめはしましたが、その時を過ぎれば元の木阿弥。

本格的に変わったのは
職員会議で「3.11その時保育園は」のダイジェスト版(Select By私)を
みんなに見てもらい、感じたことをシェアしてもらったことからでした。

そこから、みんなで話し合う機会を定期的に持ち、
みんなで防災に関する情報を集め
仕組みを少しずつ整えていったのでした。

たとえば・・・というところで、
防災(避難)訓練を見直すヒントになるかもしれないのは

・早番・お昼ごはん時・寝入りばな・遅番時・
遅番で施設長も事務長も帰り、最小の人手の時・新人だけ…などなど、
さまざまなシチュエーションを年間計画に落とし込んでいく

・緊急避難地、本当に子どもたちは歩けるの?
ここだけでいいの?ルートはどこがベスト?
道路が隆起して散歩車が使えなかったらどうする?

・できることはどんなことだろう?
~地域の人と助け合える日頃からの関係づくりを意識的に行っていこう!

・見落としていることは?
・「まあいっか」と流していることは?

~などなど。

まずは、
「どうなんだろう?」とアンテナを立てるところから
始めてみてはいかがでしょうか?

人手不足の中、忙しさに忙殺される保育現場においては
まず、問題意識を共有するところのコミュニケーションが
始まりになるのではないかと思っています。

それには、おすすめなのがこちらのDVDです。

3.11 その時保育園は

じつは、2011年の初任施設長研修の時に
汐見先生がこちらの準備中の動画を見せてくださった際、
私自身が大泣きするほど心を揺さぶられたのがきっかけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この、私が特に職員に紹介したかった言葉たちを
限られた時間の中でつないで見せられるように貼った
付箋がぼろぼろになっているあたり・・・
いかにお世話になっているかが分かるかと。

保育園で見るようになってからは、
大本である学校法人の学園本部でもこちらのDVDを購入して
災害対策に役立てているとのことでした。

余談ですが---

不安でいっぱいな私はそのうちに「防災士」の資格を取り、
静岡に引っ越してからは、
「ふじのくに防災士」にも通いました。いろいろな切り口から学ばせていただく中で
この「日本」という土地ではこれまでにも様々な災害が繰り返し起こっており
(歴史好きとしては、
災害と絡む歴史の出来事が出てくると使命感が高まります)
そこから新たな出発があり、今日の生活につながっているということ。

温泉をはじめとした毎日の幸せな生活は、
自然からの恩恵であり、ギフトであること。

いつだって私たちは、
安全な生活の片隅でリスクと背中合わせだということ。

「不二(二つに見えることも、実はひとつである)」という考え方がありますが、
誰かに起こっている出来事は、私に起こっているのと同じことと捉えて
共に痛みを感じたり、祈ったり、喜び合ったり、応援し合ったりする中で
自分にできるベストを重ねていくことが大切なことなのだと感じる今日この頃です。