こんにちは、松原です。

園で保育をして、書類を書いて、作り物をして…
家に帰っても、持ち帰りの仕事をして……
休みの日も仕事が終わらないから、園に来て仕事をする。

休んでも休んだ気がしない……

どこまで行っても仕事に追いかけられている気がして
心も体も休まらない……。

子どもは好きだけれども…
やりがいはあるけれども…

現実問題として、
保育者に求められる役割や書類は年々増えており
「終わらない」悩みとともに
呼吸が浅くなりながら仕事をする保育者は少なくありません。

そのままでいいですか?

疲弊して離職をしていく仲間に
心当りはありませんか?

私自身も
「有給という言葉を口にするのは禁句!」
と思い込んでいましたが
実際に有給が回るようになると・・・

職員がきらきらし始め、
仕事にも意欲的に、主体的に取り組み始めるという
思いがけない恩恵がありました。

がんばっているから、休まる時がほしい。
休まれば、また、がんばれる!のです。

「仕事が多い」
「終わらない」
「だから有給なんてもってのほか」
~といった悪循環から抜け出るためには、
園内の意識改革が大切な岐路になります。

変革のこれまでのいきさつは、
有給という言葉を使ってはいけないその1
 有給という言葉を使ってはいけないその2
をご参照ください。

 

*  *   *  *  *

「はい!」 

まず、私自身が手を挙げました。

それを見た職員たちには、迷いがなくなりました。
恥ずかしそうに、正直に、みんなが手を挙げました。

「やっぱり、有給使いたいです。」

「・・・ですよね~。」
(一同、笑)

「今回、あの先生に問いをもらったと思って、
いろいろな園を調べてみました。

その結果わかったことがあります。

有給の平均取得率が80%以上という園があったのです。
その園は、人が多いからとか
お金がいっぱいあるからというわけでは無く、
工夫をしていました。

年間の中で有給が取れそうな日をみんなで相談し
そこにお互いに希望を入れていくんです。

バッティングしたら、相談する。
そしてお互いに有給が取れるように配慮する。

もちろんそのために
仕事終わらせておくことも必要です。

そんなふうにしたことによって
お互いが協力し合い有給を取って折り合いをつけることで
有給の取得が進み、皆のやる気がアップしたそうです。

どうですか、皆さん。
やってみます?

課題はたくさんあるけれども、
みんながやりたいならチャレンジしてみようと思います」

すると、みんなが口々に
「やりたい」
「やってみたい」
という声を上げ始めました。

「じゃぁやりますか!
まず何から始めましょうか?」

~すると事務より
「じゃあ私一年間の有給取得可能な日を書き込める表を作ります」
~と声が上がりました。

「先生たちで、ここは休める、ここは休めないっていうのを
書き込んでいってください。
その上でみんなで希望入れてたらいいんじゃないですか」

~うんうん、そうしよう!
取れそうな日か・・・。

そんなふうに口々言い合いながら、アイデアを出し合って行きました。

たとえば、4月の初めは大変ですけど、
中旬から後半連休に入るあたりはクラスが落ち着いてきて
有給が取れる先生も出てきました。

5月も連休明けはちょっと子どもたちバタバタしますけれども
その後中旬後半・・・
また夏祭りの準備が始まる手前位など取れるんじゃないか。

また、乳児担当・幼児担当それぞれによっても
忙しい時期・忙しくない時期というのがありますので
みんなで相談しながら予定を考え希望を出し合って
有給を入れていくようにしました。

そうすることによって、
結果的に変わっていったことがあります。

有給が取りたいから、皆頑張って仕事するのです。

これまでは、日々のマンネリの中でメリハリもなく
なんとなく休んだり仕事をしたり、
効率悪くダラダラ仕事をしていましたが・・・

アメリカに行きたい。
ハワイに行きたい。
ハワイで水着でバカンスしたい!

~目標や希望があるから、
知恵を絞って仕事の段取りを組みます。

この日にハワイに行くためには、
どうやって逆算をして期限を作ってやっていけばいいのか?

自分だけが行って楽しんでも、
不在の間に 他の人に迷惑がかかると

「あなたの有給のせいでみんなが迷惑よー!」

・・・なんて言われて、
今後の有給が危うくなって来ますから
そうならないよう、
人にも迷惑がかからないように配慮するようになりました。

これまでは日々の流れで行っていた確認やリスク管理も

「私、ここ(カレンダーを指しながら)からここまでいないので、
進捗確認や連絡は、 この前までに終わらせておければと思っています。
いつだったら打ち合わせができますか?」

・・・と自発的に調整をするようになりました。また、

「私がいない時にもしもこういう事態が起こったら
この先生に連絡をしてください。
私が帰ってきたらここから対応しますので、
ご協力お願いできますでしょうか」

~そんな風にコミニュケーション連携を取り合い
リスクを予測し、リスクヘッジを行う。

そういった体制が生まれてきたのです。

それによって、遊びに行った先生は、
清々しい表情で帰ってくることができます。

いない間も「この先生がいないから回らない」といったことではなく
俗人化しない(人に依存しないで仕組みができている)仕事術で
保育を進めていくことができるということが分かりました。

はじめは恐る恐る休みを取っていた先生も、
「なぁんだ・・・私がいなくても、回るんだ・・・。」
~と、ホッとするような、少しさびしいような気持ちを越えて
仕事を自分を切り離すことができるようになっていきました。

そして、「私がいなくちゃ回らない」「休んでいられない」
という責任感にも似た〝人に依存”する仕組みによって
お互いに甘えていたのだということに、それぞれが気付きはじめました。

結果的に、有給ををしっかり取るためにみんなが知恵を絞り、
充実して帰ってきた人は、
「す~っごい楽しかったです!!
お休みいただいて、ありがとうございました!」
・・・と職場に心からの感謝と
恩返しの気持ちを持って帰ってくるようになりました。

有給を取ってリフレッシュしてきた職員は
豊かな時間を過ごせたことで、職場への感謝の気持ちを持って仕事をします。
また協力してもらったことへの感謝の気持ちがあるので
他の先生の有給や都合にも「オタガイサマ」と積極的に協力をします。

周りの職員にもいい影響がありました。
「写真見せて下さい!」
「わぁ~!素敵!!私も行きたい!」
「じゃあ、次回は○○かな?」
「よし、仕事がんばって行くぞ~!」
~と、目標を持って意欲的に仕事に取り組みます。

お互いに協力をしあうようになり園内の仕事の効率化が進み、
気持ちよくみんな、お休みを取っていくようになりました。

これまで介護をしていた職員は、
両親の通院や家族の介護当番の都合であっても
申し訳なさそうに有給を取っていましたが、
お互いに有給を取りあえる風土になってきたことで

「この日、半分帰るだけでいいんですか?
1日休まなくていいんですか?
連休は取らなくていいんですか?」
「いいのよ。まだ通院の日、他にも出てくるから。
その時に使えたら有難いから。」
「そっか、大変ですね。
いつでも言ってくださいね。」

~そんな風に介護をする方への配慮も、
さりげなくできるようになりました。

お互いがお互いを思い遣る心の余裕ができたのでしょう。

ちなみに私自身は有給で
他の地域への出向研修を行っていたため、
(私はWワークで講師をしていました)
有給をほぼ使い切っていました。

*  *  *  *  *

こういった私の物語を通して着目していただきたいのは、
“有給に対する意識の変化”です。

有給は取れるかもしれないというに認識に立った時に
みんなで「有給を取得しながら働くため」の知恵を出し合う
道が開けていたときたということです。

「できない」「無理」と思っていた 

「もしもできるとしたら?」
「やるなら、どうしたらいいんだろう?」

知恵を絞ってやり方を模索していった

~というように気持ちが変化していった、
この“変化”に意味があります。

ここで、皆さんに 質問です。

有給、取れないと思っていませんか?

なぜそう思ったのでしょうか?

もしも取れるとしたら、何をしたいですか?

どうですか何が起こるでしょう?

あなた自身の気持ちの変化はどうですか?

園全体に何が起こるでしょう?

どんなことがしたいですか?

それを実践している職員たちの表情思い浮かべてみてください。

どうですか?

ここで、「どうせ無理」「そんなの現実的じゃない」
~なんて思ってしまったあなたは、変わる気がない人です。

「変わりたい」「変えていきたい」そう思うのであれば
できない理由を言うのではなく
するために何ができるのかということを
考えていく必要があります。

施設長・園長だけではなく、
中堅さん・リーダーさん主任…

さまざまな立ち位置の方がアンテナを立てることで
訪れたタイミングをチャンスに、
風向きを変えていくことができます。

あなたの園の物語もぜひ、聞かせてくださいね。